しあわせのかたち01
しあわせのかたち01
エドワード・エルリックがイーストシティを訪れたのは、
まだ残暑厳しい9月のことだった。
東方司令部を訪ねると、このくそ熱いなか世間は世知辛いらしく
ロイ・マスタング大佐はかれこれ36時間ほどの連続勤務状態であった。
ちょっとくたびれてちょろりと髭が出てきた大佐殿は
ぼちぼちご帰宅するところだったらしい。
エドワードは報告書を手渡し、さくっと資料室詣でに移る予定だったのだが
なんの気まぐれか女性以外と食卓を共にしたくないと豪語する
大佐がランチに誘ってきたのだった。
あまりに奇妙な出来事にフリーズしていたエドワードは
都合のよいように解釈されてしまった。
そんないきさつでエドワードと大佐はイーストシティー中心部を
食事が出来る界隈へ向かって歩いていた。
徹夜明けで先ほどまでよれよれだった大佐だが
無精髭姿で外に出るわけにはいかないとすっきり髭を剃って
軍服を脱いで私服になっていた。
伊達男の面目躍如といったところか
大佐と歩いているといろんなところから声がかかる。
花屋の前を通ると
「今日は花はいいのかい?」
と恰幅のいい女店主から声をかけられ
二言三言話しては愛想良く手を振ってわかれ、
菓子屋の前を通れば可愛らしい制服に身を包んだ店員が声をかけてくる
「マスタング大佐!いつもありがとうございます。新作のリキュールショコラが出来てますよ」
「ありがとう。今日は連れがいるのでね、またの機会に楽しませていただこう。」
「このあいだのドライシェリーのケーキは絶品だった。ありがとう。」
「ありがとうございます。マスタング大佐に美味しいって言っていただけるなら自信を持っても大丈夫ですね!」
「また寄らせてもらおう。」
新作の菓子の営業というより、大佐目当てなのだろう
頬を赤くした店員はエドワードの目にも可愛らしくうつった。
可愛らしいのおいとくとして、
一向に目的地につかないことにいつもこうなのだろうかとエドワードはあきれていた。
可愛らしいお嬢さんには興味のつきないお年頃のエドワードだったが、おばちゃんにまでもに愛想を振りまくほどには達観していない。
エドワードの腹の虫がランチを要求してぐぅ~とマヌケに鳴く、
いつになったら飯にありつけるのだろうとエドワードはちょっとだけ自分を哀れんでいた。
ところが大佐視点からすると、大佐もエドワードに同じつっこみをこっそり入れていた。
なじみのパン屋の前を通れば顔なじみの女将にひっかかり、これからランチだというのにごっそり大きな紙袋いっぱいのパンを手に入れ。
果物の露天では、
「よお坊主!イーストにきてたんだな!!」
とかと店主がリンゴを投げて寄越す。
着々と増えていく荷物をついうっかり黙って手を差し出し持ってしまうのは、エドワードのことが嫌いではないからだろう。
大佐はたまにはこんなのもいいと、自身に納得させる。
これからランチだと言うのにエドワードが
「ここのリンゴはうまいんだ」
と差し出すので
二人、リンゴをかじりながら市場を奥へ奥へと移動した。