猫とウサギ
ねことうさぎ
テロの予告に、無意味な会議にどこぞの有力者のごり押し見合いにと盛りだくさんな一日でロイマスタング大佐は疲れ果てていた。
いつもなら容赦なく火を噴くホークアイの拳銃が沈黙する程度にはよく頑張った。
よれよれとハボックの運転する車に乗り込み自宅付近にさしかかる頃には、意識墜落三秒前まで追いつめられていた。
ふとロイがいつもと変わらぬはずのわが家に目を向けると1階のリビング付近に明かりがともっている。
一瞬で目が覚めた。
現金なものだと口元がゆるむ。
明かりに気がついたハボックに緊張がはしるが、振り向いた後部座席に座る上司の顔はにやけている。
ロイは元気になったが、ハボックのやる気が一気に失せた。
「カワイコチャンが待ってるんすね…うらやましいことで」
「ハボック、門柱のところで降ろしてくれ。あの子は恥ずかしがりやだからね」
「イエッサ」
ここしばらくの過密スケジュールでいったいどうやって、別れずに続いているのかその秘密を知りたいと願うハボックだった。
そのときは中にいる人物が彼もよく知る人物だとは夢にも思っていなかった。
ここでいいとハボックがドアを開けに降りるのを待たず車を降りたロイは鉄製の門を開けて庭を歩いていく。
重そうな木の扉をあけ上官の姿が消えるのを見届けてハボックは車を発進させた。
ロイは玄関をあけ大急ぎでリビングに向かう
玄関の絨毯がジャリジャリと砂の感触を伝えるのは
あの子が玄関を通ったということ。
リビングの戸を開けると案の定、金色の触覚がソファーの背もたれからちょろっと見えていた。
書斎から持て来たのだろう書物に埋もれた鋼の錬金術師がいた。
書物から顔も上げずに
「お帰り」
とひとこと。
「ただいま」
と返した。
金色の頭にごろごろとネコのように懐いてみたら、ぺしぺしと乱暴になでられた。
「おいおい風呂ぐらい入ってから寝ろよ」
「ダメだ…眠い。」
構わずにしがみつくと毛皮をなでるようになでられる。
「今日は見合いだったんだって?」
「誰から聞いたのかね」
これは旗色のまずいネタではなかろうかと、ロイは内心身構えた。
「親切なひとが教えてくれた」
「断ったのかとも聞かないのか」
「断ってなかったらオレがここにいるわけないだろ。」
ぎゅっと頬を引っ張られた。
「それとも何か?オレと二股か?」
眉が下がったロイの顔をみてエドワードは満足げにほほえみ
可愛いキスを仕掛け
「アンタの弱ってる姿かわいいな」
と刺激的な台詞を残して離れていった。
ベッドへ行けというエドワードの声を遠くに聞きながら、ロイは気持ちよく眠りに墜落したのだった。
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