花冠1話
花冠1話
イーストシティーと隣り合うイーストカレッタの街の中心で広大な面積を誇るカレッタパークにある春の午後デコボココンビもとい髪も目も腹も黒い青年と髪も目も金色の少年の姿があった。
金髪の少年はいつもの赤いコートに黒の上下では無く白いシャツに茶色のズボンパステルグリーンのスプリングコートを羽織った姿で髪もいつもの三つ編みではなくポニーテールにしている。
色のせいか柔らかい印象の少年はエドワード・エルリックこと鋼の錬金術師で隣にベージュのスーツ姿で座る黒髪の青年は食えないつかみどころない普段とは違ってうさんくさいぐらいさわやかな印象をかもし出した炎の錬金術師ロイ・マスタングだ。
エドワードは芝生の隙間に力強く生えさらに群生したクローバーからプチプチと白く可愛らしい花をもぎ取って集めている。
「鋼の何しているんだい?」
「アンタいいのか?折角名前決めたのに」
眉をひそめて小声でエドワードがささやいてきたが男からも他のピクニック中のグループからも距離があるからだろうロイは仕草でかまわないと伝えてきた。
尾行中だというのにいいのかよ!とエドワードは思わないでもなかったが責任者がかまわないと言っているのだからほおっておくことにした。
そして何をしているんだとばかりにエドワードの手元をのぞき込んでいる
エドワードはニパッと笑って顔を上げて答えた。
「ん?花かんむり作ってるけどなに?」
そう言ってさりげ無く男の方を見ている。
男のいる方向には今の季節に咲く花も少なく他の公園利用者もそちら側に余り目をやらない、ずっとそっちを向いていては怪しまれるから男側に向かってうまい具合に生えていたクローバーをいじくっていれば不振にみられず監視を続行出来るので花冠を作り出した。
「鋼のにそんな物が作れるとは驚きだ」
「まあ…ガキのころにはウインリーに作らされてたからな、それにアルと一緒に母さんの誕生日プレゼントにって毎年作ってた…母さんの墓に供えるのにも作った」
ロイはエドワードが花冠の編み方を知っていることに本当に驚いていた。
それはそうだろう目の前にいるのは少年なのだ花冠を作れるとは普通考えない。
よしんば作れても15歳の少年ともなると周囲の目とくに女性の目を気にして作ることなどないだろうにロイの目の前では普段子供扱いするなと喚く少年がつくっているのだ任務がらみとはいえ驚かずにはいられない。
「すまない悪いことを聞いたね」
からからと元気な声で幼なじみの名をあげていたが最後に小さな声で母を付け加えたエドワードにロイはすかさず謝った。
「なんて顔してるんだ?あんたらしくないぜ」
とエドワードは言ってくれはしたが気にならないはずはない。
彼にとって母の死は忘れられない痛い思い出に違いない、日々オートメールを見て鈍色に輝く弟を見て罪を忘れる事など出来ないのだから故意ではないとはいえ母の思いでを引きずり出したくはない、
失敗したと反省しながらどうフォローしようかとエドワードの方を向いたが、
窮地追い込んだ本人が助け船を出してきた。
「手持ち無沙汰だと思ったから作ってきただけだって気にすんな、弁当作ってきたんだぼちぼちメシにしない?」
ロイは遠慮なくそれにのった。
「そうするか」
ロイの窮地を救ったお弁当はお世辞抜きにすばらしいできだった。
ラタンのランチボックスの中には
たっぷり空気を均等に含んだフワフワのオムレツとチーズを挟んだサンドウィッチと
スタンダードなキューカンバサンド、空豆とツナのサラダに
こんがり焼き上がったチキン、スコーンとクロデットクリーム、淡い黄色が美しい
マーマレード、そしてポットには冷たいレッドジンガーがつまっている。
大きめのバスケットから出るは出るは大量に詰められたそれらは手作りで
エドワードによる朝長い旅の間にすっかり常連となった宿の女将に頼んで
台所を借りて作ったもので、張り込みの小道具として登場するには
もったいないほどのできばえにロイは先ほどの花冠の時よりもさらに驚いた。
「君は料理がうまいな、君いい嫁になれるよ。」
ロイは空豆のサラダを頬張りながらかなり本気で言ったのだが
「はははーーあんたバカだろ俺が嫁に行ってどおする。俺男なんだけど」
とエドワードは世辞だと思ってさらりと流してしまった。
「それを補って余りある味だよ」
ロイにしてみればただの塩もみキュウリがこんなに美味しいくて
日参している司令部の近所のカフェが色あせるほどの腕前を披露されたのだからほめてもほめたり無いぐらいであったが折角話しをそらしたにもかかわらず、またしても地雷原に迷い込んだことをロイはエドワードの次の一言が出るまで気づいていなかった。
「両親いないからそのぐらい当たり前だし、じゃないと今頃餓え死だって」
「物騒だな」
そうなながした。
しかし地雷原を無事脱けたと安心した矢先Uターンして力いっぱい地雷を踏んで砕け散ったかのような敗北にロイは口には出さなかったが自身の不注意を力一杯くいた。
きゃらきゃらと笑いながらエドワードが付け足す。
「まあバッチャン家に食べに行ってたからそんなこもないだろうけど、朝は自分らで適当にやってたから慣れてるだけ、それに錬金術の修行の一環で料理もやったからな!
サバイバル料理しか作れないあんたよりはまし。」
「錬金術の修行で料理かい?修行の一環で料理を教えるとはユニークな師匠だね。」
「そうでもねえじゃねえの?やってみると割と密接な関係にあるだよなこれが、
それと台所から生まれたって言われてるだけあって、そのつながりで暗号組んでる研究者は結構いるから役に立ってるしうまいものも食えて一挙両得ってヤツ。
図書館の料理の棚には結構あるし?って知らなかった?」
ロイはエドワードからドクターマルコーの研究書の報告を受けたので知ってはいたが
今の口ぶりは他にもあるということだろう。
エドワードはにんまり笑って
「エミリア・ジェファーソンの簡単!10分で出来る菓子全十巻以下続刊とかアンディ・メイソンの料理の基礎とかもそうだし、まだ何冊かしってるぜ」
当たり前のように言うエドワードにロイはこのガキャと思わんでもなかったが
今この場は問いただすには向かない、作戦が終わったら報告書を提出させる決心した。
国家錬金術師になるには国家錬金術試験を受ける訳だが大半の国家錬金術師は大総督府直轄の錬金術学校を出て国家試験を受け国家錬金術師になる者がほとんどをしめる、他にもエドワードのようにスカウトされて受験するものや軍内部からの推薦と受験にこぎつける方法が無いではながそれはごく少数で残りは年一回一斉実施の試験を受けて国家錬金術師資格をとる。
もちろん錬金術学校にも国家錬金術師試験にも料理など科目には含まれない。
錬金術学校を出ようとサバイバル料理をちらっと習うことはあっても料理の授業はない。
おそらく料理本の棚など生涯覗かないものがほとんどだろう。
それも10分料理といった本は雑誌の様な装丁なのだ…・主婦でもなければ手にすらとろうと考えるかすら怪しい種類の本だ。
そもそも錬金術師は自分の研究を後生に残そうと書籍の形で出版するのだから
ペラ本で刷るなど考えられないことだ、国家錬金術機関でも見落としているだろう。
ロイは改めてエルリック兄弟の能力に驚くばかりだった。